Project
HOUSE Y|季節が、暮らしを更新する別荘
Yonezawa City, Yamagata, 2025
【概要】
本計画は、アメリカ・マイアミに暮らすお施主さまが、
日本を訪れる際の滞在拠点として計画された別荘です。
建築地は、山形県米沢市の山間部。
周囲を山々に囲まれ、季節の移ろいがはっきりと表れる、自然豊かな場所です。
実はマイアミには、「山」がありません。
最初この事実を知った時には、山・川・海に囲まれた広島に拠点を置く私たちには、
「山がない」という言葉はとても新鮮でした。
お施主さまはこの日本らしい風景に強く惹かれ、この地に建築することを決められました。
建築は、そこに建ったあと自ら動くことはありません。
けれど、周囲の風景が変わることで、同じ場所に違う時間が流れます。
雪、緑、紅葉、光の角度。
訪れる季節が変わるたびに、同じ空間が少しずつ違って見える。
この別荘では、そうした「日本の四季の解像度を高める器」をつくることを目指しました。
【土足文化と、日本の土間を重ねる】
この計画で大切にしたことのひとつが、文化の違いを空間としてどう受け止めるか、ということです。
日本とアメリカの暮らしの違いのひとつに、履き物の扱いがあります。
靴を脱ぐ/脱がないという違いは、玄関やポーチ、縁側といったバッファー空間の捉え方に大きく関わります。
本計画では、エントランスを抜けると土間空間へつながる構成としました。
土足文化の感覚を、日本古来の「土間」に重ねる。
そして、縁側で靴を脱ぎ、畳へ上がる。
文化の違いを言葉で説明するのではなく、身体の所作として自然に切り替わるように。
その移ろいを、空間の中に丁寧に組み込んでいます。
【内と外が、反転する】
平面計画では、一本の柱を中心に、内と外が反転するような構成が採られています。
室内側には、内縁側を介して土間空間が広がる。
外側には、外縁側を介して日本庭園が広がる。
一本の柱を中心に、縁側が十字形につながることで、内と外の境界が曖昧になっていきます。
日本建築では、内と外を明確に断ち切るのではなく、縁側や障子、庭との距離によって、関係を少しずつ調整してきました。
この別荘でも、その作法を現代の滞在空間として読み替えています。
外にいるようで、内にいる。
内にいながら、外の気配を受け取る。
その曖昧さが、季節とともに過ごす時間を豊かにしています。
雪見障子が、時間を変える
建具には、雪見障子を採用しています。
障子の開け閉めによって、外が見えたり、隠れたりする。
同じ空間、同じ広さであっても、見え方が変わるだけで、流れる時間や空間の広がり、温度感は大きく変わります。
さらに本計画では、外部に面する雪見障子の作法を、内部の間仕切りにも継承しています。
雪見障子である必要がない場所に、あえてそのルールを引き継ぐ。
その結果、隣室の襖の柄が障子越しに滲み、内部空間にも奥行きが生まれました。
「見せる」でも「隠す」でもない。
その中間にある表現が、空間の気配をやわらかくつないでいます。
開け閉めで、過ごし方が変わる
日本建築には、ふすまや障子の開け閉めによって、空間の使い方や距離感を変えてきた歴史があります。
田の字型に連なる和室では、建具を開けることで大きな一室として使い、閉じることで個室性を高める。
時間帯や人数、過ごし方に合わせて、空間が柔らかく変化してきました。
HOUSE Yでも、その可変性を大切にしています。
別荘は、訪れる人数も、季節も、過ごし方も変わる場所です。
家族だけで静かに過ごす日もあれば、ゲストを迎える日もある。
ふすまや障子の開け閉めによって、用途も距離感も変えられるように計画しました。
日本の間取りが育ててきた可変性を、現代の別荘の“もてなし”として受け継いでいます。
力強さと、大らかさを同居させる
キッチンダイニングには、お施主さまの希望により古材を使用し、構造体を現しにした力強い空間を計画しています。
木材には、国産の杉や葦などを採用し、空間に訪れる人をやわらかな匂いで包み込むように整えました。
古材と現しの構造がつくる、大らかなスケール。
一方で、肌に触れる素材や匂いは、硬くなりすぎないように。
強さとやさしさを、同じ空間の中に共存させています。
建築の骨格は力強く。
滞在の温度はやわらかく。
その両方を整えることで、異文化の中でもどこか懐かしく感じられる場所を目指しました。
窓は、季節を迎えるためにある
この建築にとって、窓は光を取り込むためだけのものではありません。
近くの木々を眺める窓、遠くの山々を望む窓。
場所によって異なる風景を受け取り、季節の移ろいを感じるための装置です。
お施主さまが日本を訪れるたび、外の景色は少しずつ変わっています。
雪の白、山の緑、秋の色。
その変化が、滞在の記憶を更新していく。
窓は、風景を切り取るだけでなく、ここに戻ってくる楽しみをつくるための要素でもあります。
季節と文化を、身体で感じる場所へ
HOUSE Yは、日本の風土や文化を、説明ではなく体験として受け取るための別荘です。
土足文化と土間。
縁側で靴を脱ぎ、畳へ上がる所作。
雪見障子の可変性。
ふすまや障子で変わる距離感。
杉や葦、畳の匂い。
そして、窓の先に広がる山々と季節の移ろい。
異なる文化の間に、優劣をつけるのではなく、重ね合わせる。
その中で、お施主さまにとっての日本での滞在が、より深く、豊かな時間になるように。
季節が変わるたび、暮らしが少し更新される。
その体験を受け止める“器”として、この別荘を計画しました。











Information
- Date.
- 2025.07
- Principal Use.
- 住宅
- Location.
- 山形県米沢市
- Structure.
- 木造2階建て
- Site Area.
- 583.52㎡
- Total Floor Area.
- 177.1㎡
- Photo.
- 横山 芳樹
- Construction.
- 桑名 翔太 / 株式会社アーキトリップ
- Collaborative design.
- 桑名 翔太 / 株式会社アーキトリップ