Project

X³|木で大空間を成立させるための「一本のルール」

Hiroshima City, Hiroshima, 2026

本計画は、中四国を拠点に設計施工を行う建設会社さまの新社屋です。
成長に伴い社員数が増え、手狭になった既存社屋の隣地に、新たな拠点を整えることから始まりました。

求められたのは、

  • 来客対応の打合せスペース
  • 事務室の拡張
  • 来客用駐車場
  • 緑豊かなアプローチ

さらに既存社屋とは、構造躯体の縁を切ったうえで回廊で接続し、
新旧を一体の社屋として成立させる高難易度の試みも含まれます。
そして何より、これからの会社の変化に柔軟に追従できるように、
空間レイアウトの自由度は絶対条件でした。

 

鉄骨でもRCでもなく、木で大空間をつくる

大空間を成立させる手段として、鉄骨造やRC造(鉄筋コンクリート造)という選択肢は一般的です。
しかし本計画では、木材を主たる構造躯体とし、
構造の組み方そのものでコストパフォーマンスの高い大空間を実現することを目標に据えました。

ここで難題となったのが建物形状です。
敷地条件と建ぺい率の整理より、建物の平面形は9.1m角の正方形としました。

ただ、通常の木造在来工法で、9.1mという距離を一般的な流通材一本で飛ばすことはできません。
搬入条件も含め、流通材の長さは概ね6mまでが一般的です。

 

断念した案|大黒柱+素直な解法

当初は、9.1m角の中心に大黒柱を立て、そこから+状に(X,Y方向に)梁を掛ける案を検討しました。
この考え方なら梁一本あたりは最長でも約4.5mとなり、流通材で構成できます。

しかし、木造のモジュールである1820mm(6尺)グリッドで外周の柱を割り付けると、
中央の大黒柱が座標上噛み合いません。
結果として、大黒柱からの梁を外周の桁で受ける構成となり、
部材寸法が大きくなっていくことが予測されました。

それは「木で軽やかに大空間を実現する」というコンセプトからも、
コストコントロールの面からも適切な解法ではないと判断し、この案は断念しました。

 

たどり着いた一手|梁を45°回転させる

問題を解決するために、梁の向きを平面上で45°回転させました。
この一手が、この建物の生命線であり、全てのデザインの根拠にもなっています。

回転により、梁は外周部の柱へ1820mmピッチで規則正しく架け渡せるようになり、
応力伝達の面でも極めて合理的な架構形式となりました。

一方で、対角線方向は12mを超えるため、中心を交点として2本の鉄骨梁を用い、屋根面にX型のフレームを形成します。
これがプロジェクトタイトルにもなっている、一つ目のXです。
この鉄骨Xに直交するように木梁を架け、外周の柱へ接続することで、
木材を主とした軽やかな大空間を成立させています。

 

X³|三つのXを、建物全体の言語にする

  • 1つ目のX|屋根のX(架構の生命線)

屋根架構の中心にXフレームを立て、木梁の規則性と合理性を担保しました。
構造上の必然が、そのまま空間の骨格=デザインの根拠になります。

  • 2つ目のX|外壁に立つX(耐力を「隠さない」)

一部に鉄骨を用いてはいますが、主たる構造は木です。
そのため木造に不可欠な耐震要素(耐力壁)は、当然必要になります。

ただし本計画で目指したのは、
木を主たる構造としながら、内部のレイアウトは限りなく自由にすること。
そこで耐力壁は、原則として外周部にまとめる方針としています。
内部の間仕切りに耐力を頼らず、大空間が成立する構成です。

外周部は、壁で塞いでしまうこともできます
(※パースでも一部はパネルをはめ込んだ表現にしています)。
しかし今回は、あえて構造ブレースをX型に入れ、内外からはっきり見えるようにしました。

安全性を担保するだけでなく、
屋根で生まれた「X」というルールを外壁へ継承する。
構造を裏方にせず、建物全体の統一言語として立ち上げています。

  • 3つ目のX|床に浮かぶX(構造と意匠の重ね方)

2階の床にも屋根のXを引き継いでいます。
床に見えるXは、2階を支える構造梁です。

一般的には構造用合板を梁の上から固定しますが、本計画では梁天端から仕上げと下地分だけ下げた高さに合板を固定し、面合成を発揮させる構造計画としています。

これにより、2階床を支える梁がXとして浮かび上がります。
構造としてだけでも、意匠としてだけでもない。
両者を余すことなく引き立たせる工夫を、設計で際立たせました。
(※1階床は構造材ではありませんが、2階に倣い、仕上げの貼り分けでルールを継承しています)

 

既存社屋との関係|二棟で一棟に見せる

既存社屋の隣に建て、かつ一体利用を試みる以上、二棟を関連付けるデザインルールが必要でした。
そこで、既存建物各階に設けられている水平に連続する庇をデザインコードとして、新社屋にも取り入れています。

この小庇は、外壁や開口部を雨垂れから守り、外観にリズムを与えます。
そして何より、新旧二棟がバラバラに存在するのではなく、
二棟で一棟に見える関係性をつくる役割を担っています。

 

庭と回廊|“間”が、社屋をひとつにする

新旧の間にある空間には、高木・低木を配置し、緑豊かな庭を計画しました。
新社屋からも既存社屋からも、社員が集まるラウンジからも庭を眺められる。
会社の日常の中に、視線がふっと戻ってくる場所をつくることを狙っています。

回廊は単なる連絡通路ではなく、新旧を一体として編み直すための「間」。
庭を挟むことで、建物同士の距離は「分断」ではなく「関係」に変わり、働き方の背景として静かに佇みます。

 

結び|構造は裏方ではなく、建物の言語になる

X³は、三つのXから生まれた名前です。
構造としてだけでなく、デザインとしてだけでもない。
両者を分けずに成立させることで、空間の説得力が残ると考えました。

この場所が、会社の成長とともに、社員の皆さま一人ひとりに長く大切にされることを願っています。

Information

Date.
2026.04
Principal Use.
オフィス
Location.
広島県広島市
Structure.
鉄骨・木造 複合構造 2階建て
Site Area.
147.33㎡
Total Floor Area.
165.62㎡
Furniture.
YUTAKA オリジナル
Structural Design.
照井 健二 / 有限会社 照井構造事務所

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