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土地は「買う前」に、一度だけ“建築の目”で整理する
Guide
土地探しは「買ってから」ではなく「買う前」に一度、建築の視点で整理しておくと安心です。
先に「成立する建物」の輪郭をつかめると、迷いが減り、判断がぶれにくくなります。
なぜ「買う前」なのか
現地に立つと、図面の上では見えないものが立ち上がってきます。
- 風の抜け方
- 光の落ち方
- 騒音の遠近
- 周囲の視線や気配
そして何より、土地は買ってから変えられないことがとても多いものです。
立地や価格が魅力的でも、建物側の条件が噛み合わないと、
- 思っていた規模が成立しない
- 開口部(窓・出入口)の取り方が難しくなる
- 快適性や使い勝手に無理が出る
といった「後から分かるズレ」が起きやすくなります。
もちろん、これらは設計で解決できることも多い。
ただ、早い段階で建築の目で一度だけ読み解くひと手間が、後の遠回りを減らす。
これは多くの計画に向き合ってきた経験の中で、私は強く実感しています。
私たちが候補地で見ていること(4つ)
大切なのは、完璧な結論を出すことではありません。
購入判断に必要な情報を先にそろえて、見える化すること。
そして、「成立する建物」の輪郭をつかむことです。
1)法規(まず できる/できない の輪郭)
- 用途地域や防火の指定など、計画に関わる法規条件を確認します
- 建ぺい率・容積率など、ボリュームに関わる条件を整理します
- 高さや斜線など、建物形状に影響する条件を見立てます
- 接道状況(道路の幅員、間口、位置関係)を確認します
※上記は一例です。
実際には法規に関わる条件はより多岐にわたり、敷地と計画内容に応じて整理すべき情報も変わります。
そのため私たちは、必要な前提条件を一つずつ確認しながら、成立性を丁寧に見立てていきます。
2)日照(明るさは窓の数だけでは決まらない)
- 周囲建物の影の落ち方(時間帯でどう変わるか)
- 東西南北の抜け(空の見え方)
- 冬に日が入りやすい場所/夏に熱が溜まりやすい場所
おすすめの行動(できる範囲で)
▶︎現地を午前/午後のどちらかで一度見る
▶︎可能なら別日でもう一度、時間帯を変えて見る
3)騒音(静かさは現地でしか分からない)
- 現地で一度、立ち止まって耳を澄ます
- 近くの幹線道路や踏切、学校、公園など音源を探す
- 室内化した時にどう逃がせるか(配置・開口)を想像してみる
4)周辺環境(運用の質に直結する気配)
- 隣接建物の窓位置や視線の抜け
- 近隣の建て替え余地(将来の環境変化の可能性)
- 風が通る方向、湿気が溜まりやすい場所
- 夜間の明るさ/人通り/アプローチの印象
不動産会社さんと連携して、判断の精度を上げる
土地を見ると、つい立地や価格に目が行きがちです。
ただ実際には、土地そのものではなく、そこに建つ建物と、その使い方(運用)が本題になります。
だから私たちは、不動産のプロである不動産会社さんと連携しながら、
設計のプロとして、この土地でどんな建物が無理なく成立するかを先に整理します。
- 必要に応じて、不動産会社さんからの情報提供を受けながら候補地をご案内できます
- ご希望に応じて土地のご案内に同行し、建築家の視点でアドバイスします
不動産は不動産のプロに。設計は設計のプロに。
役割を分けて同じ方向を向くことで、判断の精度が上がり、
結果として納得感のある意思決定につながりやすくなります。
具体的に、どう整理するか(おすすめの順番)
1)まずは相談(無料)
多くの設計事務所では、初回相談を無料で行っています。
ポイントは相談の時期です。土地購入の前相談がおすすめです。
立地や価格だけで判断する前に、建物の視点で一度目利きをしておくと、候補地の選び方が変わってきます。
- どんな使い方をしたいか(事業・運用の前提/優先順位)
- どんな建物をイメージしているか(規模感・必要室・動線)
- 何が不安か(法規/日照/音/視線 など)
2)提案を見てみたいというご意思をいただいた場合に、現地調査
「私たちの提案を見てみたい」というご意思をいただいた方には、
ご希望に応じて、購入前の土地を一緒に確認する機会を設けます。
現地調査の内容や距離によっては、有償となる場合があります。
その際は、事前に内容と条件をご案内します。
3)見える化した情報で、候補地を比較する
ポイントは完璧な結論ではありません。
購入判断に必要な情報を先にそろえ、予算内でおおよそ成立する建物の輪郭をつかむこと。
- できること/難しいこと
- 工夫で超えられそうなこと
- どうしても譲れないこと
この仕分けができると、判断が一気に楽になります。
土地を見に行くときに、持っていくと役立つ道具
現地確認は、大げさな道具がなくても大丈夫です。
ただ、次の道具があると気づきが増えて、比較の精度が上がります。
- スマホ(カメラ/地図/メモ)
▶︎写真は遠景→中景→足元の順で撮ると、後で整理しやすくなります
▶︎気になった場所は地図にピンを打っておくと整理が楽になります - メジャー(5m程度)
▶︎意外と狭い/広いを、その場で身体感覚に落とせます - 簡易コンパス(スマホでも可)
▶︎方位が分かると、日照の読みが一段ラクになります - 筆記用具+小さなメモ帳(またはクリップボード)
▶︎その場で書いた一言が、後から大きな判断材料になります - 歩きやすい靴
▶︎敷地の端や高低差、周辺の路地まで歩けると、情報量が増えます - (できれば)小型の懐中電灯
▶︎擁壁の足元、境界まわり、暗がりの確認に役立ちます
相談時にあるとスムーズなもの
できる範囲で構いません。
- 候補地が分かる資料(地図URLなど)
- 敷地資料(寸法や形状が分かるもの)
- 気になっていることメモ(例:日当たり/騒音/周辺の目線 など)
まとめ
土地は、買ってから変えられないことがとても多い買い物です。
だからこそ購入前に一度だけ、法規・日照・騒音・周辺環境まで含めて、計画の土台を整理しておく。
その土地の可能性と難しさを、先に掴む。
安心は、こういう小さな積み重ねでできています。
思いが環(めぐ)り、心が還る場所へ。
